海水から大きなエネルギーを生む核融合反応とは?気になる原理や安全性
- 2019.01.13
- 2019.01.19
- 役立つ知識
よこのじ(@yokonoji_work)です。
多くのエネルギー問題を解決する核融合にはワクワクします。原子力発電の核分裂とは仕組みが違いますが、”核”と付くところから良いイメージを持たれないというところがあると思います。今回は、核融合の原理と安全性がどんなものか調べた内容をお伝えします。
核融合反応の原理
核融合反応とは、太陽の内部で起こっているものと同じ現象です。2つの軽い原子核が融合して1つの原子核になるとき、エネルギーが放出されます。この一連の反応が核融合反応です。
分かりやすい動画がありますので、ぜひご覧ください。日本語字幕が付いています。
核融合反応をさせるには、高い温度の環境が必要です。
太陽は1500万℃の温度と、鉄の20倍もの密度になるほどの大きな重力を持ちます。このような高い温度の環境では、原子の周りを回る電子が原子から離れていきます。この原子と電子が離れた状態はプラズマと呼ばれます。
漂う2つの原子は、お互いが正の電荷なので通常は反発します。しかし、高温で原子が高速に動く環境では、反発する力に打ち勝って原子どうしがくっつきます。こうしてできた新しい原子核が冒頭に説明した重たい原子核ということになります。
太陽においては1500万℃の温度で核融合反応が起こりますが、地球上で核融合反応させるにはより高い温度が必要です。これは密度の差によります。
太陽は圧倒的に高い密度を持つため、ある範囲内で多くの原子核がくっついています。しかし、同じ範囲であれば、密度が低いと原子核がくっつく確率は低くなります。密度が低い場合に核をくっつきやすくするには、より高い温度を与えて原子核の移動速度を速くする必要があります。これにより原子核が出会いやすくなり反応を促進させることができます。こういう仕組みにより、地球で核融合をさせるには太陽より大きな温度(1億℃以上)が必要となります。
地球上で1億℃を超える環境を作るのには、高密度のレーザーを照射する方法があります。
参考:レーザー核融合って何?
反応させるのが難しい核融合では、より効率よく反応させるためにどの原子を利用するのかが重要です。太陽では、水素がヘリウムになる核融合反応を起こしています。しかし、水素を地球上で核融合させるのは難しいようです。もう少し反応させやすいのは、重水素と三重水素です。
特に、重水素と三重水素を組み合わせることで核融合反応しやすくなり、核融合発電の研究はこの組み合わせで行われています。
「【100倍もあり得る?】仮想通貨Ethereum(イーサリアム)ETHの価格予想 時価総額を比べてみました」の記事で、海水から金(ゴールド)が抽出できるといったことを書きましたが、重水素も海水から抽出可能です(海水の0.015%は重水素と酸素が結合したもの)。また、三重水素自体は量が少ないようですが、リチウムから作り出すことができます。そして、リチウムは海水から抽出することが可能です。つまり、核融合反応でエネルギーを取り出すことが実用化すれば、海水が燃料となります。量にして1億年分はあるのだとか・・・。
1グラムの重水素-三重水素燃料からタンクローリー1台分の石油(約8トン)に相当するエネルギーを得ることができるようですので、核融合発電などが実現すれば地球のエネルギー問題は解決ということになるかもしれません。
現在の主要な発電方法「化石燃料」「核分裂」「太陽光」では、大気汚染、核廃棄物、天候に左右されるといったデメリットがありますが、海水からエネルギーを作り出せる核融合は、これらの問題すら解決してしまう期待の技術です。
核融合(Nuclear Fusion)は、フュージョン(ゴジータ)どころか、ポタラ(ベジット)くらいのインパクトがありますね!(どっちも好きですが)
核融合反応の安全性
核融合は、原子力発電の核分裂と同じく”核”と付くため危険なイメージがありますが。実際には安全な仕組みです。
まず、核分裂(原子力発電)の仕組みを簡単に見てみます。
核分裂は、原子核が2つ以上の原子核に分裂して、そのときに熱を発する反応のことです。原子は陽子と中性子からなる原子核とその周りの電子から構成されていて、これらがどの数で安定したかによって原子名が変わります。
参考:【7-1-1】原子の構造
この原子に外部から中性子を追加すると、原子は安定状態を崩して別の原子に分裂します。原子力発電においては、分裂しやすいウラン235が利用されています。ウラン235に中性子を当てると、バリウムやクリプトンに分裂すると同時に余った中性子が放出されて、その中性子がさらに別のウラン235に当たることで連鎖的に核分裂が発生します。
この連鎖的な反応を安全な速度で行うために、原子力発電所では水などの減速材で中性子の速度をコントロールしたり、制御棒で余分な中性子を吸収するような制御を行っています。これらの制御は次々と進む核分裂反応を抑え込もうとするものです。つまり、制御に不具合があると危険な速度で核分裂が起こることになります。
既にお気付きかもしれませんが、核融合の制御は核分裂とは逆です。つまり、核融合反応を継続させるために制御が必要です。
核融合をさせるには、高い温度でプラズマ(原子核と電子が離れた状態)を作り、それらがくっつきやすくするために、一定の範囲内に閉じ込めて密度を高める必要があります。1億℃以上の温度を与えて核融合を起こし、発生した熱を利用して1億℃を保つ必要があるからです。高密度の環境を維持できなくなり、反応速度が遅くなり温度が下がると、核融合の反応は止まってしまいます。
核融合は、プラズマをいかにして高密度状態で閉じ込めるかが重要で、そのための様々な研究が行われています。
原子レベルの小さな反応ですが、核融合を安定的に維持することは難しく、強力な磁力を得るために巨大な装置が必要になるほどです。
制御不能になったとしても反応が止まるという点では、原子力発電(核分裂)より安全と言えます。核融合を商用化して安定的に発電できるようになるにはまだまだ掛かりそうですが、クリーンで多くのエネルギーを得られる核融合は、何としてでも実現してほしいですね。
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